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上場準備前に知っておきたいシリーズ③ 
上場申請書類Ⅱの部の記載方法と気をつけるポイント

まとめ

  • 審査にあたって重点的に確認される資料であり、なおかつボリュームも多いため、実務上重要かつ最も負荷がかかる作業の一つである

  • 資料の作成のみだけでなく、業務の再設計やシステム対応などを考慮して、時間的余裕を十分確保して対応準備を進めることが重要である

1 上場申請書類 IIの部とは

(1)Ⅱの部の概要

IIの部とは、東京証券取引所の「上場申請のための有価証券報告書(IIの部)」のことをいい、幹事証券会社、証券取引所の審査担当者に対する申請会社のすべての内容にわたる会社説明書である。そのため「上場申請のための有価証券報告書(Iの部)」に比して、より広範でかつ詳細な記載が求められる。また、申請書類の中で最もボリュームのある書類(企業によるが、概ね150~200頁以上)であり、その作成には多大な労力と時間を要するものである。

IIの部の記載のためには、根拠資料の整備やデータを正しく集計するための社内体制の確立が必要であるが、その過程こそが実務担当者にとっては上場準備そのものということもできる。したがって、IIの部は慎重に、かつ完全な整合性をもって、いわば「完成品」として提出すべきものである。

(2)Ⅱの部の記載内容

以下に示されているとおり、IIの部の構成内容は、申請理由から始まり、会社の沿革、事業の内容、企業グループの概況等、その内容は申請会社のすべてにわたるものとなっており、ボリュームも申請書類の中で最も多い。

Ⅱの部はIの部に記載されている内容をより深く、広範に記載することはすでに述べたが、記載する内容の面で留意したいのは、IIの部を審査担当者が読んだ上で審査が行われることを十分に考慮することである。記載内容は詳細すぎず、かといって簡素すぎない「ちょうど良い」記載内容とすることが肝要である。取引所の審査担当者からの質問に「ちょうど良い」具合で回答するかのような記載内容が、結果としてスムーズな審査と上場承認につながるだろう。

(3)IIの部の作成体制の準備

① プロジェクトチームの編成

上述したように、IIの部の記載内容は申請会社の多岐にわたるものとなる。その上で完全な整合性をもったIIの部を作成するためには、全社的な協力が必要となる。このため「上場準備室」などの名称を持ったプロジェクトチームを編成し、当該プロジェクトチームを中心にIIの部の作成作業を進めていくケースが多い。 

② 情報システムの整備

IIの部作成に必要なデータは膨大であり、かつ過去に遡るものもあるため、会社の情報システムの整備運用状況により、データ集計の事務作業量が大きく影響する。IIの部作成目的のみならず、上場後の安定的で迅速な開示体制を構築する意味でも情報システムの整備は重要である。なお、開示制度が連結決算中心となっていることに伴い、関係会社のデータ集計体制の整備もIIの部作成のために必要である。 

IIの部作成を目的とした情報システムの整備については、まずは現在の情報システムで集計できる各種データと(A)会社経営上必要なデータ、B)IIの部作成上必要なデータ、(C)上場審査上必要と思われるデータを比較することから始めるべきであろう。その上で、例えば、売上・仕入・棚卸資産・売上総利益が、上記の必要データごとに集計されるよう、品目コードを全面的に見直すことを検討する必要があると考える。また、予算、資金繰り(計画・実績)についても同様である。多くの場合、システムやアプリケーションの導入、または再構築・拡充などの見直しを伴うことになるので、早めに着手しておく必要がある。このように、IIの部の作成体制準備としては、プロジェクトチームの編成という組織面の準備と情報システムの整備というシステム面の準備が求められることになる。

以下では、IIの部をモデルに、その作成上、データ集計に労力を要することが想定される項目を抜き出し列挙している。これらの項目に必要なデータが、現状で作成されている経営管理資料や会計帳簿から容易に集計できる体制やシステムがあるか、また、過去のデータが容易に取り出せるか、事前にチェックしておく必要がある。

 

(4)IIの部の記載項目

Ⅱの部の記載項目のうち、特にデータを収集するにあたり労力を要すると思われる項目は以下のとおりである。

III.事業の概況について

2.事業の内容について

 (8)仕入の状況

  d 最近3年間の主要な仕入先

   (b)セグメント毎の取引金額

  f 最近3年間における主要な原材料等の状況 

 (9)生産の状況

  b 最近3年間の受注実績及び生産実績

   (a)セグメント毎の受注実績の推移

   (b)品目ごとの生産実績の推移

  d 最近3年間の主要な外注先

   (b)セグメント毎の取引金額(有償支給)

   (d)セグメント毎の取引金額(無償支給)

 (10)販売の状況

  d 最近3年間の主要な販売先

   (b)セグメント毎の取引金額

  f 最近3年間のセグメント毎の地域別販売実績

  g 最近3年間の業種別販売実績

 

IV.経営管理体制等について

9.役員及び役員に準ずる者について

 (1)最近3年間及び申請事業年度の役員及び役員に準ずる者

 (4)配偶者並びに二親等内の血族及び姻族の関係

 (5)役員及び役員に準ずる者が議決権の過半数を実質的に所有する会社の事業内容等

 (6)オーナーが関与する会社等の状況

10.従業員の状況について

 (2)最近3年間における企業集団の従業員のセグメント毎の異動の状況

 

V.株式等の状況について

1.大株主について

 (1)大株主の最近3年間における所有株式数及び持株比率の推移

 

VI.経理の状況について

1.最近3年間の連結財務諸表の明細について

2.最近3年間の財務諸表の明細について

3.関連当事者取引等

 

Ⅷ.過年度の業績等について

1.最近5年間の連結貸借対照表及び連結損益計算書について

2.最近5年間の連結損益の変動要因について

 (1)最近5年間に終了する各連結会計年度における売上高等の変動要因

 (2)最近5年間に終了する各連結会計年度の事業セグメント別の売上高等及びその変動要因

3.最近5年間の収支の変動要因について

 

IX.今後の見通しについて

1.今後2年間の企業集団の状況について

 (1)最近1年間の連結損益及び今後2年間の連結損益計画表

 (2)今後2年間の連結損益計画表における事業セグメント別売上高等

 (4)最近1年間の連結キャッシュフロー及び今後2年間の連結キャッシユ・フロー計画表

 (5)今後2年間の設備等に対する投資計画

 (6)今後2年間の連結キャッシュフロー計画及び投資計画

上場申請書類のⅡの部は、上場準備にあたっても最も負荷がかかる作業であり、かつ上場審査に当たって、まずは重点的に審査される書類であることから、十分に進め方を検討した上で、システム対応も考慮して時間的余裕を持って対応していく必要がある。

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