意向表明書とは、買手が売手に対して、自らの買収意向と希望条件を伝達する文書のことをいいます。 二段階入札を実施する場合、 一次入札のタイミング (一次意向表明書) と、 二次入札のタイミング(最終意向表明書)で2回意向表明書を提出することになります。表明書に記載する内容としては、実務上はプロセスレターといわれる入札の進め方等の要領を記載した書面に指示があるので、 最低限その内容については記載する必要があります。 一次意向表明書で一般的に要請される項目は下記があげられます。
プロセスレター上、今回のM&A取引についてスキームの記載がありますが、そのスキームで問題ないか、また別のスキームを提案する場合にはその内容と理由を記載します。
自己資金か外部調達かを記載します。 なお、 外部調達の場合、 売手としてはその確度を気にしますので、金融機関への打診状況や調達の実現可能性に ついても記載します。
役職員の継続雇用の可否、 雇用条件に関する意向等を記載します。
対象会社へ派遣を予定している役職員の有無、また予定している場合にはその役職員の人数や予定する担当職務を記載します。
DDにて調査を希望する項目(法務、財務、税務、 ビジネス等)、 インタ ビューを希望する場合の対象者、またスケジュールについての希望を記載します。
一次意向表明書提出にあたり完了している社内手続および決裁者、 また最 終契約締結およびクロージングまでに予定している、 社内および社外での手続 (取締役会の承認等) を記載します。 M&Aアドバイザー、弁護士、会計士、税理士等の外部専門家の起用がある場合には、売手のそれらとのバッティングを避けるため、 その法人名等を記載します。
今回のM&A取引にかかる検討について窓口となる方の連絡先(氏名・会社名・部署名・住所・役職 電話番号 メールアドレス) を記載します。
今回のM&A取引に関する要望等があれば、その他として記載します。
意向表明書は、売手に対し自分たちがいかに魅力的な買手候補先かアピールする書面になります。 複数の候補先の中から売手に選ばれるためには、どのポイントで意向表明書を比較しているのかを考慮したうえで、 訴求ポイントを押さえて作成する必要があります。
前述のとおり、実務上、意向表明書に記載を求められる項目は、プロセスレターといわれる案内書に記載されており、記載を求められている項目は最低限記載する必要があります。
プロセスレター上、意向表明書に記載が求められていない項目であっても、より売手に訴求できる項目がある場合は、積極的に記載することで売手の印象がよくなります。たとえば、過去に対象会社と同業種の会社に対しM&Aを行い、グループ間のシナジーにより当該会社の企業価値の向上に成功した場合は、過去のM&A実績を記載することで、売手へのさらなるアピールが可能になります。
原則として意向表明書には提出期限があり、期限を超過した場合は意向表明書を受け付けてもらえないことがあります。そのため、余裕をもって意向表明書を提出できるようスケジュールを調整することが必要です。 また、意向表明書の提出前後に、 売手または対象会社と直接コンタクトをとることは厳禁です。 最悪の場合、入札の対象から除外される可能性があります。一般的に手が着目する意向表明書の項目は、取引に際しての条件面です。すなわち、取引希望価額、スキーム、役職員の処遇等について、売手の満足する水準で買手が提示できているか否かがポイントとなります。
この中で、 多くの場合、 取引希望価額が最も重視されます。当然、売手としては高値で売却したいという思いがあり、同時にこの金額以下では売らないという最低限の価格目線を有しているものです。 そのため、売主が求める最低限の価格目線を超えたうえで、他の候補先の動向も考慮し、買手として可能な範囲でなるべく高い金額を提示することが必要となります。
最低限の価格目線や他候補先の動向を正確に把握することは通常困難です。そのため、相手方のM&Aアドバイザーと頻繁にコンタクトをとり、密な関係を構築したうえで、 それとなく最低限の価格ラインや他補先の動向等を聞き出すことができれば、他の候補先よりも優位な条件を提示することが可能となります。
価格以外で売手が着目するポイントとしては、スキームや役職員の処遇等があげられます。基本的には、売手の希望をふまえたうえで、スキームや役 職員の処遇に関する条件を提示することが必要となります。