秘密保持契約は、大きく差入式 と双務式の2つに大別されます。 両者の違いは、契約当事者に売手が含まれるか否かという点です。
すなわち、差入式の場合は、買手のみが秘密保持契約に署名または記名押印し、売手に差入れ、 売手にて保管することになります。
記名押印し、双方でそれぞれ一部ずつ保管することになります。 一方で、双務式の場合は、買手と売手の双方が秘密保持契約に署名または なお、情報開示の主体は売手 (対象会社)であることから、情報の受け手である買手の署名または記名押印は、差入式または双務式を問わず必須となります。
両者を比較した際のポイントですが、差入式は、売手の署名または記名押印が不要になり買手の署名または押印で足りるので、 双務式と比較して効率的にM&Aを進めることが可能となります。そのため、複数の会社を売却候 補先とするような入札案件の場合は差入式で行う場合が多くなります。
双務式は、買手が売手に対しても秘密保持を求めるような場合、たとえば 買手がM&Aを検討していること自体を外部にもらされたくない場合や、M&Aに際して買手も秘密情報を開示する場合は、双務式で行うことが多くなります。秘密情報の範囲とは、どの情報までを秘密情報とするかということです。 秘密情報に該当するのは、案件に関連して開示された情報すべてなのか、 情報のうち重要なものに限定するのか、書面で開示した情報のみなのか、口頭やメールは含むのか、情報を複写・複製 編集・加工・改編して得られた 情報を含むのか、開示された情報だけでなく、案件に関する検討や交渉が行われていること自体も含むのか等を規定します。
売手としては、秘密情報の範囲を最大限広げることで、自社の情報の漏えいを防ぐことができます。一方で買手としては、過度な負担を負わないよう秘密情報の範囲を狭めることを求めます。 なお、秘密保持契約が締結されないと、そもそも案件が進まないため、買手として実質的に大きな影響がない場合は、売手の要望をある程度許容するほうが無難です。情報開示の範囲とは、秘密情報を開示する対象者の範囲をどこまで広げるかということです。
貫手の会社(役員または職員を含みます) のみなのか、買手が属するグルー プ会社も含めるか、M&Aに携わる外部専門家(会計士・税理士・弁護士 M&Aアドバイザー等) を含めるか等です。
一般的には、外部専門家を情報開示の範囲に含める場合が多く、秘密保持 契約の契約主体はあくまでも買手であり、 買手がすでに秘密保持契約を締結しているまたは締結を予定している場合、 外部専門家が直接売手と秘密保持契約を結ぶことはありません。
そのため、外部専門家を情報開示の範囲に含める場合は、外部専門家にも 秘密保持契約において遵守すべき義務と同等の義務を負わせたうえで、 外部専門家の義務違反に対しては、買手が責任を負う条項を規定することが必要となります。秘密情報の例外とは、すでに知っている情報まで秘密情報に含まれてしまうと、当該情報の使用にまでさまざまな制約が付されてしまい、通常の事業活動に影響を及ぼすことがあるため、このような情報を秘密情報の範囲外として取り扱うものです。
具体的には、秘密情報開示以前にすでに知っていた情報、開示後に契約違反なく公知となった情報や、適法な手段で第三者から取得した情報は、秘密保持契約において、秘密情報とは含めないこととするのが一般的です秘密保持契約の有効期間は長ければ長いほど、秘密保持契約に拘束される期間が長くなるため、情報提供側に有利になり、短ければ短いほど情報受領側に有利になります。