DDにおいて、リスクが発見された場合、発見されたリスクの程度によって、M&Aへの影響は異なります。発見されたリスクが買手にとって許容できないほど大きく、また最終契約書上の取引金額・スキーム 特別補償等の変更によっても買手にとって当該リスクを許容できないような場合は、M&A自体が中止となります。
上記以外の場合は、 発見されたリスクについて、 Valuation (取引金額)に反映させるか、 取引金額以外の最終契約書の内容を修正することで対応します。なお、買手にとって最終契約書に反映するほどでもないリスクの場合は、最終契約書への反映はせずに、 当該リスクを買手で受ける場合もあります。DDでの発見事項を最終契約書に反映させる場合、発見事項の種類につき 扱いが異なります。発見事項の種類は(ア)定量化可能な発見事項、(イ)定量化できない発見事項の2つに大別されます。
定量化可能な発見事項とは、対象会社の価値に対して、具体的な金額で、 減額 (または増額)が可能な発見事項となります。
DDでの発見事項のうち、 定量化可能なもの以外の発見事項が該当します。具体例としては下記の項目が挙げられます
① 対象会社社外に関する事項・・・・・ 事業に必要な許認可の未取得、取引先の取引基本契約の不存在等
② 対象会社社内に関する事項・・・・・ 各種議事録(株主総会、取締役会) の不整備、労務管理体制の不備等
上記のうち、労務管理体制の不備に関しては、従業員の労働時間をタイムカード等で記録しておらず、正確な実労働時間を把握していない等があげられます。昨今の労働環境を取り巻く状況を考慮すると、 今後よりいっそう、 買手にとって重視する項目になることが想定されます。(ア) 定量化可能な発見事項
定量化可能な発見事項については、 まずはValuationへの反映を検討します。
(イ) 定量化できない発見事項
定量化できないものは、最終契約書へ反映させます。その方法としては、そもそものスキーム変更や、前提条件、誓約事項、表明保証、特別補償等の条項になんらかの規定を加えることが考えられます。
具体的には、発見事項が事業運営上重要であり、クロージングまでの治癒が必要な事項であれば、前提条件や誓約事項にクロージングまでに治癒する旨の規定を追加します。また、発生するかは不明だが、発生した場合に損害 を与える可能性がある事項については、表明保証に規定したうえで損害賠償請求できるようにするか、特別補償を定めることが考えられます。特別補償とは、表明保証することができないリスクに対して、将来そのリスクが顕在化した場合に、損害を賠償することができるよう、通常の損害賠償規定とは別個に規定しておく補償条項のことをいいます。